## シェイクスピアのヘンリー六世 第二部と時間
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時間の経過
「ヘンリー六世 第二部」における時間の流れは、現実の時間と劇中の時間のずれによって特徴付けられます。劇は1445年のヘンリー六世とマーガレット・オブ・アンジューの結婚から、1455年の第一次セント・オールバンズの戦いの直前まで、約10年間の出来事を描いています。
しかし、劇中で描かれる出来事の順序や時間間隔は、歴史的な正確さとは必ずしも一致しません。たとえば、劇の開始時に幼少として描かれているリチャード(後のリチャード三世)は、史実では1452年の生まれであり、劇中の初期の出来事の際にはまだ生まれていません。
また、劇中の時間の流れは、場面転換や登場人物のセリフによって、圧縮されたり、伸縮されたりするように感じられます。たとえば、ある場面から次の場面への移り変わりによって、数日から数ヶ月、あるいは数年が経過することがありますが、劇中のセリフからは、そのような時間の経過が明確に示されない場合があります。
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時間のテーマ
「ヘンリー六世 第二部」では、時間経過そのものが重要なテーマとして浮上しています。劇中の登場人物たちは、しばしば時間の流れに翻弄され、過去の出来事に縛られたり、未来への不安に駆られたりしています。
たとえば、ヘンリー六世は、過去の栄光と現在の混乱を比較し、イングランドの衰退を嘆きます。一方、ヨーク公爵やその支持者たちは、未来への野心を抱き、王位継承権を主張し、現在の秩序を覆そうとします。
劇中には、時計や予言など、時間を象徴するモチーフも登場します。これらのモチーフは、登場人物たちの運命や、イングランドの未来に対する不安感を暗示しています。
「ヘンリー六世 第二部」における時間表現は、単なる劇的な装置として機能するだけでなく、歴史の無常さ、権力闘争の虚しさ、人間の運命の不確かさといった、より普遍的なテーマを浮かび上がらせる役割も担っています。