## シェイクスピアのジョン王の光と影
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正当性と野心の影
「ジョン王」は、最初から最後まで正当性と野心の対立が影を落とす作品です。イングランド王の座についたジョンは、正当な王位継承者ではないという疑念に常に悩まされます。彼の甥であるアーサーの方が、血筋の上では王位継承権を持つとされ、この事実はジョンの統治を揺るがす影となります。ジョンは王冠を維持するために、策略をめぐらせ、時には冷酷な手段さえ辞さない姿勢を見せます。
一方で、フランス王フィリップはアーサーを支援し、イングランドへの介入を試みます。フィリップの行動は、自国の利益を追求するための野心を隠したものであり、純粋にアーサーの正当性を支持しているとは言い切れません。正当性を主張する裏に潜む野心が、作中に複雑な影を落とします。
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愛国心と私欲の光
「ジョン王」には、愛国心をテーマとした輝かしい場面も存在します。特に、フランス軍の侵攻に対して、イングランドの貴族たちが一致団結して立ち向かう姿は印象的です。BASTARD(庶子)ことフォーコンブリッジは、祖国への強い忠誠心と勇猛さで戦場を駆け抜け、観客に強い感銘を与えます。
しかし、愛国心を掲げる一方で、私欲のために暗躍する人物も描かれています。フランスの皇太子ルイは、イングランドの貴族たちを唆し、ジョン王に対する反乱を扇動します。ルイの行動は、イングランドの混乱に乗じて自らの勢力を拡大しようとする私欲に基づくものであり、愛国心とは無縁です。このように、作中では愛国心が光として描かれる一方で、その裏に潜む私欲が影として浮かび上がります。