## シェイエスの第三身分とは何かと人間
### シェイエスの「第三身分とは何か」
1789年1月、フランス革命直前に発表された「第三身分とは何か」は、聖職者(第一身分)、貴族(第二身分)に続く身分とされてきた第三身分の政治的権利を強く主張した政治パンフレットです。著者はエマニュエル=ジョゼフ・シェイエス(1748-1836)、当時フランスの聖職者でありながら身分制に基づく社会の不平等さに疑問を抱いていた人物でした。
### 第三身分の定義と重要性
シェイエスはまず、「国民とは何か」という問いから始めます。彼は、国民とは「共通の法律によって結びつけられ、共通の意志の表明によって統治されている人々の集合体」と定義しました。そして、フランス国民にとって真に不可欠な存在は何かを問いかけ、それは「衣食住を提供し、社会全体に奉仕する」第三身分であると断言します。
シェイエスは、第三身分こそが「農民、商人、職人、学者、法律家、医者など、あらゆる職業の人々を含む、社会の圧倒的多数を占める」と主張しました。彼らは社会を支える基盤であり、国家に貢献しているにもかかわらず、政治的な権利はほとんど認められていませんでした。
### 特権身分への批判
シェイエスは、特権身分である聖職者と貴族を厳しく批判しました。彼は、彼らを「何の役にも立たない寄生虫」と呼び、国民全体に奉仕するどころか、その労働の成果を搾取していると非難しました。シェイエスは、特権身分が享受する免税特権や政治的優遇措置は不当であり、廃止されるべきだと主張しました。
### 第三身分の要求
シェイエスは、第三身分こそが真の国民であると主張し、彼らに政治参加の権利が認められるべきだと訴えました。具体的には、納税額に応じた平等な代表権の確保、身分ではなく能力に基づいた公職への就任資格の平等などを要求しました。
### パンフレットの影響
「第三身分とは何か」は、当時のフランス社会に大きな衝撃を与えました。このパンフレットは、第三身分の不満を代弁するものであり、フランス革命の勃発を促す要因の一つとなりました。シェイエスの主張は、国民主権の原則、基本的人権の尊重、法の下の平等といった、近代民主主義の基礎となる理念を明確に打ち出した点で歴史的意義を持ちます。