## サン・シモンの産業者の教理問答と人間
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産業者の教理問答
における人間理解
「産業者の教理問答」(1823-24) は、フランスの思想家アンリ・ド・サン=シモンが晩年に執筆した著作であり、彼の思想の集大成と位置づけられています。この著作の中でサン・シモンは、当時の社会構造を「怠惰な階級」である聖職者や貴族と、「働く階級」である産業者という二項対立で捉え、産業者を新しい社会の指導者として擁立する必要性を説きました。
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人間は「能力」によって評価されるべき存在
サン・シモンは、人間をその「能力」によって評価すべきだと主張しました。彼が言う「能力」とは、社会全体に貢献できる実利的・生産的な能力を指し、従来の身分や財産によってではなく、この能力の有無こそが人間の価値を決定すると考えました。
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「働くこと」は人間の義務であり喜びである
サン・シモンは、「働くこと」を人間にとっての義務であると同時に、喜びであると捉えました。彼は、人間は労働を通して自己を実現し、社会に貢献することで幸福を得ることができると考えていました。
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人間は社会的存在であり、相互に依存し合う
サン・シモンは、人間を社会的存在として捉え、個人は孤立して存在するのではなく、常に他者と関係性を持ちながら生きていると強調しました。そして、社会の構成員はそれぞれ異なる能力を持ちながらも、相互に依存し、協力することで社会全体が発展していくと考えていました。
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「新しいキリスト教」と人間の道徳的完成
サン・シモンは、自らの思想を「新しいキリスト教」と呼び、愛と友愛に基づいた社会の実現を構想しました。彼は、産業社会における道徳的指導原理として、「最も多くのものを最も多数の人に与える」というスローガンを掲げ、人間の物質的・精神的な幸福を追求することを目指しました。