サリンジャーのライ麦畑でつかまえての話法
語り手と視点
本作は、ホールデン・コールフィールドという16歳の少年の一人称視点で語られています。一人称視点であるため、読者はホールデンの主観を通して物語を体験します。
口語調の文体
ホールデンの語り口は非常に口語的で、当時の10代の若者特有のスラングや俗語が頻繁に登場します。例えば、「phony（偽物）」、「crumby（最低の）」、「goddam（ちくしょう）」といった言葉遣いが挙げられます。このような表現を用いることで、ホールデンの未成熟さや反抗心が強調されています。
意識の流れ
ホールデンの語りは、論理的な展開よりも、彼の意識の流れに沿って進みます。そのため、時系列が前後したり、唐突に話題が変わったりすることがあります。これは、ホールデンの不安定な精神状態や、周囲とのコミュニケーション不全を反映しています。
反復と強調
ホールデンは特定の単語やフレーズを何度も繰り返す特徴があります。例えば、「phony」や「it killed me」といった表現は、作中で執拗なまでに繰り返されます。このような反復表現は、ホールデンの精神的な不安定さや、特定の事柄に対する強いこだわりを表しています。
ユーモアと皮肉
ホールデンの語り口は、シニカルなユーモアと皮肉に満ちています。彼は周囲の人々や社会の偽善を鋭く見抜き、辛辣な言葉で批判します。このようなユーモアは、ホールデンの知性と感受性の高さを示すと同時に、彼の孤独感や絶望感を浮き彫りにしています。