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サッカレーのバリーリンドンから学ぶ時代性

## サッカレーのバリーリンドンから学ぶ時代性

### 18世紀の社会構造と階級制度

サッカレーの小説『バリー・リンドン』は、18世紀ヨーロッパを舞台に、野心的なアイルランドの青年レドモンド・バリーの成り上がりと転落を描いています。バリーは、愛と富、そして社会的地位を求めて、手段を選ばずに行動します。彼は賭博、決闘、策略を駆使し、ついにはイギリス貴族の未亡人と結婚して「バリー・リンドン」と名乗り、上流社会への階段を駆け上がります。

小説は、当時の社会が厳格な階級制度によって支配されていたことを如実に描き出しています。バリーの出自はアイルランドの貧しい家の出であり、当時の社会では貴族階級への道は閉ざされていました。彼の野心は、当時の社会では「分不相応」なものと見なされ、彼の行動は、周囲の人々から軽蔑と嘲笑の的となります。

バリーが上流社会に足を踏み入れてからも、その壁は厚く立ちはだかります。彼は貴族社会の習慣やマナーを身につけることに苦労し、上流階級の人々からは常に「成り上がり者」と見下されます。彼の妻の息子であるブリンドン卿からは、露骨な敵意を向けられます。

### 愛と結婚の経済的側面

『バリー・リンドン』では、愛と結婚が、必ずしも感情に基づくものではなく、経済的な思惑と密接に結びついていることが描かれています。バリーが最初の妻であるイギリス軍将校の妻と恋に落ちるのは、彼女の財産目当てという側面が否めません。

また、バリーがその後結婚する未亡人、リンドン夫人は、莫大な財産を持つ裕福な女性です。バリーは、彼女との結婚を通して、自身の社会的地位と経済的安定を確立しようと目論みます。

こうした結婚観は、当時の社会では決して珍しくはなく、むしろ一般的なものでした。特に女性にとって、結婚は経済的な安定を得るための、ほとんど唯一の手段でした。女性は、財産や社会的地位のある男性と結婚することが求められ、恋愛感情は二の次とされることも少なくありませんでした。

### 戦争の現実と兵士の生活

バリーは、自身の野心を叶えるために、七年戦争に従軍します。小説は、当時の戦争の現実を、美化することなく描いています。バリーは、戦場で多くの仲間を失い、自身も傷を負います。彼は、戦争の悲惨さと、兵士としての過酷な生活を経験します。

当時の戦争は、現代の戦争とは異なり、兵士の多くは、貧困層出身者や、犯罪者、負債者などでした。彼らは、生活のために、あるいは借金を返すために、命がけで戦っていました。バリー自身も、戦争に従軍することで、自身の境遇を打破しようとします。

小説は、戦争が、個人に与える影響の大きさを浮き彫りにしています。バリーは、戦争を通して、人間性の醜さと、社会の不条理さを目の当たりにします。戦争体験は、彼のその後の人生に大きな影を落とします。

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