コンラッドの闇の奥のテクスト
語り手と物語の枠組み
「闇の奥」は、名前の明かされない語り手によって語られる枠物語の構造を取っています。語り手は、テムズ川に停泊したヨットの上で、マーロウという男がコンゴ川での経験を語るのを聞いています。 この入れ子状の語りによって、読者は物語から一歩距離を置いた視点を得ると同時に、マーロウの言葉の信頼性や客観性について疑問を抱くよう仕向けられます。
象徴主義と寓意
コンラッドは「闇の奥」を通して、具体的な描写の中に複雑な象徴主義と寓意を織り交ぜます。 特に重要なのは「闇」というモチーフであり、これは文字通りのコンゴのジャングルや、登場人物たちの内面、植民地主義の残虐行為など、複数の意味合いを持ちます。
植民地主義への批判
コンラッドは「闇の奥」において、当時のヨーロッパ列強による植民地支配を鋭く批判しています。 特にベルギー領コンゴにおける搾取と残虐行為を、登場人物や出来事を通して告発しています。 しかし、コンラッドの視点は単純な善悪二元論に陥ることはなく、植民地主義の複雑な影響や、支配者と被支配者の双方に見られる人間の闇を描き出しています。
探検と内面への旅
「闇の奥」は、コンゴ川を遡る地理的な探検であると同時に、登場人物たちの内面を探る心理的な旅でもあります。 特に、象牙商人カーツは、文明社会から隔絶された環境の中で、自身の内なる闇と対峙することになります。 この過程は、人間存在の根源的な問い、そして文明と野蛮、理性と狂気といった対立概念を浮き彫りにします。