## ゲーテの若きウェルテルの悩みの話法
ゲーテの若きウェルテルの悩みの話法は、一人称単数で書かれた書簡体小説という形式をとっています。
この形式がもたらす効果として、以下の点が挙げられます。
### 主人公ウェルテルの主観的な内面描写
書簡体小説という形式、そして一人称視点によって、読者はウェルテルの心の動きや葛藤を直接的に追体験することになります。 喜怒哀楽、そして恋情や苦悩といった感情の揺れ動きが、ウェルテル自身の言葉で赤裸々に綴られることで、読者は彼の心情に深く共感し、作品世界へと引き込まれていきます。
特に、恋の対象であるロッテへの叶わぬ思いや、身分差、社会規範との葛藤など、ウェルテルの繊細で情熱的な内面が、書簡という形式を通して鮮やかに描き出されています。
### 限定された視点と客観性の欠如
一人称視点であるがゆえに、物語はあくまでウェルテルの主観を通して語られます。 そのため、他の登場人物たちの心情や、物語全体の客観的な状況を把握することは困難です。 読者は、ウェルテルの視点を通してのみ物語を解釈することになり、彼の主観に影響された情報しか得ることができません。
例えば、ロッテへの恋心は、あくまでウェルテルの側からの一方的な感情として描かれ、ロッテが実際にどのように感じているのかは、断片的な描写から推測するしかありません。
### 時間の経過と心情の変化
書簡には日付が記されており、読者はウェルテルの心情の変化を時系列に沿って追うことができます。 時間の経過とともに深まるロッテへの愛、それによって増していく苦悩、そして精神的に追い詰められていく様子が、日付を追うごとに明確になっていきます。
また、書簡によって語られる内容や文体、長さの変化からも、ウェルテルの精神状態や感情の揺れを読み取ることができます。