ケルゼンの純粋法学を読んだ後に読むべき本
ハート『法の概念』
ケルゼンが『純粋法学』で展開した法実証主義、特にその規範体系としての法という視点は、法哲学において後の議論に多大な影響を与えました。その中でも、H.L.A.ハートの主著『法の概念』は、ケルゼン理論を批判的に継承しつつ、独自の法理論を構築した点で必読と言えます。
ハートは、ケルゼンの規範論、特に法を命題として捉える点には一定の評価を与えつつも、いくつかの点で批判を加えています。まず、ハートは、ケルゼンが法体系の基礎を「Grundnorm(基本規範)」に求めたことを批判します。ハートは、基本規範は究極的に事実認識に還元されなければならず、純粋な規範として捉えることはできないと主張しました。
さらに、ハートは、ケルゼンが法を「強制秩序」と捉えた点についても批判を加えます。ハートは、法は強制だけでなく、人々の自発的な行為を導く側面も持ち合わせていると指摘し、法の義務性を説明するために「承認の規則」という概念を導入しました。
ハートの『法の概念』を読むことで、ケルゼン理論の射程と限界をより深く理解することができます。また、義務の根拠、規則と命令の区別、法的体系の構造など、法哲学における重要な論点について、ケルゼンとは異なる視点から考察を深めることが可能になります。