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ケルゼンの純粋法学の対称性

ケルゼンの純粋法学の対称性

対称性とは

ケルゼンは、法秩序を、上位の規範が下位の規範を段階的に授権していくピラミッド型の構造として捉えました。この構造において、重要なのは「規範は規範によってのみ創設される」という点です。これは、上位の規範が下位の規範を創設するための根拠となることを意味し、最終的には、すべては憲法という最高規範に帰着します。

義務と権利の対称性

ケルゼンの純粋法学において、義務と権利はコインの表と裏のような関係にあります。ある規範が誰かに義務を課すとき、同時にそれは別の誰かに対して権利を賦与しています。

例えば、「不法行為によって他人に損害を与えた者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う」という民法の規範を考えます。この規範は、加害者に対して損害賠償の義務を課すと同時に、被害者に対して加害者から損害賠償を求める権利を賦与しています。

このように、ケルゼンは義務と権利を、同一の規範から生じる対称的な関係として捉えました。

権力授与と権限の対称性

ケルゼンの法秩序におけるもう一つの対称性は、権力授与と権限に見られます。上位の規範は、下位の規範を制定する権限を特定の機関に授与します。この権力授与は、同時にその機関が特定の行為を行う権限を持つことを意味します。

例えば、憲法が国会に法律を制定する権限を授与している場合、国会は法律によって国民に義務を課したり、権利を付与したりする権限を持ちます。

この点においても、権力授与と権限は、同一の規範から生じる対称的な関係にあるといえます。

対称性の意義

ケルゼンは、これらの対称性を明らかにすることで、法秩序の論理的な整合性を示そうとしました。義務と権利、権力授与と権限は、それぞれが独立した概念ではなく、法規範という一つの軸によって結びついていることを明らかにすることで、法秩序を体系的に理解しようとしたのです。

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