## ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の普遍性
ケインズ経済学の核心
ケインズの「雇用・利子・貨幣の一般理論」（1936年）は、古典派経済学の均衡理論を批判し、有効需要の原理に基づいた新しいマクロ経済学を提示しました。ケインズは、市場メカニズムが完全雇用を自動的に達成するという古典派経済学の主張を否定し、経済には不完全雇用均衡状態が存在しうると論じました。
一般理論の核心的な主張
ケインズの「一般理論」の核心的な主張は、以下の3点に集約できます。
1. **有効需要の原理**: ケインズは、経済活動の水準は、生産された財・サービスに対する総需要（有効需要）によって決定されると考えました。有効需要が不足すると、企業は生産を縮小し、雇用が減少します。
2. **流動性の罠**: 利子率が一定水準まで低下すると、人々は債券ではなく貨幣を保有するようになり、金融政策の効果が限定的になります。これが流動性の罠と呼ばれる状態です。
3. **政府の役割**: ケインズは、市場メカニズムが有効需要を十分に創出できない場合、政府が財政政策を通じて介入し、有効需要を増加させるべきだと主張しました。
一般理論の影響と現代経済学における位置づけ
「一般理論」は世界恐慌後の経済学に革命的な影響を与え、現代マクロ経済学の基礎となりました。ケインズの思想は、第二次世界大戦後の資本主義経済の安定成長に貢献したと評価されています。
普遍性に関する議論
「一般理論」の普遍性については、現在も議論が続いています。
* 支持者は、世界金融危機や新型コロナウイルス感染症による経済危機において、ケインズ政策が有効性を示したことを根拠に、その普遍性を主張します。
* 一方、批判者は、「一般理論」が特定の歴史的文脈の中で生まれたものであり、現代経済には適合しない部分があると指摘します。
現代経済学における発展と課題
ケインズの「一般理論」は、その後の経済学の発展に多大な影響を与え、現代マクロ経済学の基礎となりました。
* 新ケインジアン経済学は、ケインズ経済学をミクロ経済学的基礎付けに基づいて再構築しようとする試みです。
* 一方、ニュー・ケインジアン経済学は、合理的期待形成や不完全競争などの要素を取り入れ、ケインズ経済学を発展させています。
現代経済学は、ケインズの「一般理論」を批判的に継承し、発展させていくことが求められています。