ケインズの雇用・利子・貨幣の一般理論の位置づけ
1. 出版当時の経済学界の状況
1929年に始まった世界恐慌は、当時の経済学では説明できない未曾有の経済危機でした。古典派経済学では、市場メカニズムが働けば完全雇用が達成されると考えられていましたが、現実には世界中で失業者が溢れ出し、経済は長期にわたって低迷しました。ケインズは、このような状況を打開するために、従来の経済学の枠組みを超えた全く新しい理論体系を構築する必要性を痛感していました。
2. 『一般理論』の内容と新機軸
ケインズは、1936年に出版した『雇用・利子及び貨幣の一般理論』の中で、有効需要の原理に基づいた独自の経済理論を展開しました。この理論の骨子は、以下の3点にまとめられます。
* **有効需要の原理**: 生産量や雇用量は、需要によって決定されるという考え方。従来の供給側から経済を分析する考え方とは全く異なる視点を与えた。
* **流動性の罠**: 利子率が一定の水準まで低下すると、人々は債券よりも貨幣で保有することを好むようになり、金融政策の効果がなくなる状態。
* **乗数効果**: 政府支出や投資などの増加が、最終的にその何倍もの国民所得の増加をもたらす効果。
これらの分析を通してケインズは、市場メカニズムが自動的に完全雇用を達成するとは限らず、政府が積極的に介入して有効需要を創出する必要があると主張しました。
3. 『一般理論』が与えた影響
『一般理論』は、出版と同時に大きな反響を呼び、世界恐慌後の経済政策に多大な影響を与えました。特に、アメリカではニューディール政策の理論的支柱となり、世界各国で公共投資や社会保障制度の拡充が進みました。また、『一般理論』は、現代のマクロ経済学の基礎を築き、その後の経済学の発展に計り知れない影響を与えました。
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