グロチウスの自由海論の技法
自然法とローマ法の融合
グロチウスは、「自由海論」において、
・ 自然法:神によって定められ、理性によって認識できる普遍的な法
・ ローマ法:古代ローマの法体系
という、一見すると異なる二つの法体系を巧みに融合させています。彼は、海の自由という概念を論じる際に、まず自然法を根拠として、海はすべての人々に共通の財産であり、誰にも所有できないと主張します。
古代の権威と歴史的資料の活用
グロチウスは自身の主張を補強するために、古代ギリシャ・ローマの哲学者や詩人、歴史家、法学者などを幅広く引用しています。 例えば、海の自由という概念については、キケロ、プラトン、セネカなどを引用し、古代から広く認められてきた考え方であることを示しています。
比較法学的視点の導入
グロチウスは、当時のヨーロッパ諸国の慣習や条約を比較検討し、海の自由に関する国際的な共通認識を明らかにしようと試みています。彼は、ポルトガルやスペインなど、当時の海洋進出を積極的に行っていた国の主張を批判的に分析し、海の領有を一方的に主張することはできないと反論しています。
論理的な構成と明快な文章
「自由海論」は、問題提起、論証、結論という論理的な構成に基づいて書かれており、非常に明快な文章で書かれています。グロチウスは、複雑な法理論を分かりやすく解説することに努め、読者に自身の主張を理解させようとしています。