## グリム兄弟のグリム童話集から学ぶ時代性
###
グリム童話に見る19世紀の社会と価値観
グリム童話は、ヤーコプ・グリムとヴィルヘルム・グリム兄弟によって19世紀初頭に編纂された、ドイツの民話を集めた作品集です。素朴で残酷な描写も多いこれらの物語は、子供向けのおとぎ話として世界中で親しまれていますが、その一方で、当時の社会や文化、道徳観を色濃く反映した作品群でもあります。
例えば、「シンデレラ」や「白雪姫」といった物語には、継子いじめや女性の美しさへの執着といったテーマが描かれています。これは、当時の家父長制社会における女性の立場や、結婚に対する価値観を反映していると言えるでしょう。女性は男性に従属する存在であり、その価値は美しさや従順さで測られるという考え方が、物語の根底には流れています。
###
厳しい自然環境と貧困、社会不安
また、「ヘンゼルとグレーテル」や「赤ずきん」に見られるように、多くの物語で森が危険な場所として描かれている点も注目すべきです。これは、当時のドイツにおいて、森が未開の地であり、獣や盗賊の危険と隣り合わせであったことを反映しています。また、これらの物語には、貧困や飢餓といったテーマも描かれており、当時の厳しい生活状況がうかがえます。
さらに、「ラプンツェル」や「眠れる森の美女」など、外部との接触を断たれた塔や城に閉じ込められる女性の姿は、当時の社会における女性の抑圧された立場を象徴しているとも解釈できます。自由に外に出歩くことができず、結婚相手も自分で選ぶことができない女性たちの閉塞感が、物語に投影されているのかもしれません。
###
教訓性と残酷描写：道徳と現実の狭間
グリム童話の特徴として、その教訓性の高さも挙げられます。多くの物語は、正直さや勤勉さといった道徳的な価値観を教え、子供たちに正しい行動を促すことを目的としていました。しかしその一方で、魔女や鬼といった恐ろしい存在や、残酷な描写も少なくありません。これは、当時の社会が、子供たちにとって危険と隣り合わせの厳しい現実であったことを物語っています。
グリム童話は、単なる子供向けのおとぎ話ではなく、19世紀のドイツ社会を映し出す鏡のような作品群と言えます。その背景にある社会構造や価値観、人々の暮らしを知ることで、物語はより深く理解することができます。そして、現代社会との共通点や差異を見出すことで、私たち自身の生き方や社会のあり方についても考えるきっかけを与えてくれるのではないでしょうか。