グラムシの獄中ノートの対称性
ヘゲモニーと市民社会
グラムシの獄中ノートにおいて、ヘゲモニーと市民社会は対称的な概念として提示されます。支配階級は、強制的な支配(政治社会による支配)だけでなく、合意に基づく支配(市民社会による支配)を通じて、自らのヘゲモニーを確立しようとします。
獄中ノートでは、市民社会は、国家とは異なる独立した領域として描かれ、そこでは、イデオロギー、文化、道徳といったものが生産され、争われます。支配階級は、市民社会における諸機関(学校、教会、メディアなど)を通じて、自らの価値観や世界観を普及させ、被支配階級の合意を形成しようとします。
伝統的知識人と有機的知識人
グラムシは、「伝統的知識人」と「有機的知識人」という対称的な概念を用いて、知識人の役割を分析します。伝統的知識人は、自らを社会から独立した存在と捉え、客観的な立場から社会を分析しようとします。一方、有機的知識人は、特定の社会階級と結びつき、その階級の利益のために活動します。
グラムシは、すべての知識人は、自覚的であるか否かに関わらず、特定の社会階級と結びついていると主張します。そして、労働者階級は、自らのヘゲモニーを獲得するために、独自の有機的知識人を育成する必要があると訴えます。
戦争の位置づけ / 戦争の形態
グラムシは、戦争を、政治、経済、文化など、さまざまなレベルにおける闘争の一形態として捉えます。 そして、戦争には、「運動戦」と「陣地戦」という二つの形態があると指摘します。
運動戦は、短期的な軍事衝突を特徴とし、主に、政治権力を奪取することを目的とします。一方、陣地戦は、長期的なイデオロギー闘争を特徴とし、主に、市民社会におけるヘゲモニーを確立することを目的とします。
グラムシは、先進資本主義国では、市民社会が発達しており、支配階級のヘゲモニーが強固であるため、革命運動は、長期的な陣地戦を展開する必要があると主張します。