## クラウゼヴィッツの戦争論の思考の枠組み
戦争の本質
クラウゼヴィッツは、戦争を独立した理性活動ではなく、政治の延長線上にあるものと捉えました。彼にとって戦争とは、「政治の他の手段では達成できない政治目的を、戦闘という手段を用いて達成しようとする行為」です。つまり、戦争は政治目的を達成するための手段の一つであり、政治と切り離して考えることはできません。
戦争に影響を与える要素
クラウゼヴィッツは、戦争を複雑な現象と捉え、以下の三つの主要な要素が相互に作用しあっていると説きました。
* **情熱**: 国民の感情、憎しみ、愛国心など、戦争を推進する原動力となる要素。
* **偶然性**: 指揮官の能力、兵士の士気、天候などの予測不可能な要素。
* **理性**: 政治目的を設定し、戦争を指導する政府や軍の合理的な計算。
これらの要素は常に変化し、予測不可能な形で戦争に影響を与えるとクラウゼヴィッツは強調しました。
摩擦
クラウゼヴィッツは、戦争には「摩擦」と呼ばれるものがつきものであると述べています。摩擦とは、計画と現実の乖離を生み出す要因であり、情報不足、誤った判断、兵站の困難、兵士の疲労など、様々なものが含まれます。
摩擦は戦争を複雑化し、予測を困難にするため、指揮官は常に摩擦を意識し、柔軟に対応する必要があるとクラウゼヴィッツは説いています。
攻防の二元性
クラウゼヴィッツは、戦争を攻撃と防御の二元的な行為と捉えました。攻撃は敵を撃破し、自らの意志を押し付ける行為であり、防御は敵の攻撃を防ぎ、自らの力を保持する行為です。
クラウゼヴィッツは、一般的に防御の方が有利であると考えました。しかし、戦争の目的を達成するためには、最終的には攻撃が必要になるとも述べています。
軍事的天才
クラウゼヴィッツは、戦争の不確実性と複雑さに対処するためには、「軍事的天才」を持つ指揮官が必要であると考えました。軍事的天才とは、洞察力、決断力、勇気などを持ち合わせた、優れた資質を持つ指揮官を指します。
軍事的天才は、不十分な情報や変化する状況下でも、正しい判断を下し、戦争を勝利に導くことができるとクラウゼヴィッツは説いています。