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クックのイギリス法提要の光と影

## クックのイギリス法提要の光と影

光:イギリス法全体の体系化

エドワード・クックの「イギリス法提要」(Institutes of the Law of England)は、17世紀初頭に出版された、それまでのイギリス法の膨大な判例法を体系的にまとめ上げた、画期的な法学書です。

クックは、1603年から1613年までイングランドおよびウェールズの最高司法官を務めた人物で、その豊富な知識と経験をもとに、イギリス法の各分野を網羅的に解説しました。

「イギリス法提要」は、4つの巻から構成されています。

* 第1巻:土地の保有形態に関する法律(不動産法)
* 第2巻:訴訟手続に関する法律(手続法)
* 第3巻:刑事犯罪に関する法律(刑法)
* 第4巻:裁判所の管轄権に関する法律(裁判所法)

各巻は、それぞれ独立した著作として出版されましたが、全体として、当時のイギリス法の全体像を把握できるよう、体系的に編纂されています。

クックは、単に既存の法律を列挙するだけでなく、それぞれの法律の背後にある歴史や原理、そしてそれらがどのように適用されるべきかを詳細に論述しました。 また、彼は、法律の解釈において、単なる条文の解釈にとどまらず、社会の慣習や道徳、そして「自然法」の概念をも重視しました。

「イギリス法提要」は、出版後すぐにイギリス法曹界で必読書となり、その後数世紀にわたって、法律家たちの手引きとして、そして裁判における重要な判例法の源泉として、大きな影響を与えました。

影:政治的な意図と偏り

一方で、「イギリス法提要」は、クック自身の政治的な意図や偏りも色濃く反映した著作であるという批判もあります。

クックは、国王の権力に対する制限を重視する立場をとっており、「イギリス法提要」の中でも、国王大 prerogative writ などの国王の権限に対して、コモン・ローに基づいた厳しい制限を加えています。

これは、当時、国王の絶対主義的な政治を進めようとしていたジェームズ1世と対立する立場でした。

実際、クックは、ジェームズ1世との対立により、1616年に最高司法官の職を追われています。

そのため、「イギリス法提要」は、単なる法学書としてだけでなく、クック自身の政治的な主張を込めた著作としても解釈することができます。

また、「イギリス法提要」には、当時の社会通念に基づいた差別的な記述も含まれています。 例えば、女性や貧困層に対する差別的な法律や慣習が、当然のこととして記述されている箇所もあります。

これらの点は、「イギリス法提要」の影の部分として、批判的に捉える必要があります。

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