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クックの『イギリス法提要』の思想的背景

## クックの『イギリス法提要』の思想的背景

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思想的背景

エドワード・クック(1552-1634)の著した『イギリス法提要』(The Institutes of the Lawes of England)は、17世紀イギリスの法思想史において極めて重要な著作です。 この書は単なる法律解説書ではなく、クックの法思想、歴史観、政治思想が色濃く反映された書であり、後の世代に多大な影響を与えました。

クックの思想的背景を理解する上で重要な要素として、以下の点が挙げられます。

* **コモン・ローの伝統**: クックは、ローマ法ではなく、イギリス古来からの慣習法であるコモン・ローの優位性を強く主張しました。 彼はコモン・ローを、国王の権力をも制限しうる、歴史的に積み重ねられてきた英知の結晶と見なしていました。 『イギリス法提要』の中で、クックは過去の判例を網羅的に引用し、コモン・ローの体系的な解説を試みています。 これは、国王の専制を警戒し、法の支配を擁護しようとする彼の姿勢の表れと解釈できます。
* **議会主権の思想**: クックは、国王といえども法の上に立つことはできないという法の支配を強く信じていました。 彼は、議会は国王の権力を制限する力を持つ存在であると考え、議会の立法権の優位性を強調しました。 これは、当時の国王の専制的な政治と対立するものであり、後のイギリスにおける立憲主義、議会政治の発展に大きな影響を与えました。
* **自然法思想の影響**: クックは、人間の理性によって認識できる普遍的な法である自然法の概念を重視していました。 彼は、コモン・ローは自然法と一致するものであり、自然法の原理に基づいて解釈されるべきであると主張しました。 このことは、法の支配を正当化し、国王の恣意的な権力行使を抑制する根拠として機能しました。

これらの思想的背景から、『イギリス法提要』は単なる法律解説書を超えた、政治的なメッセージを持った書であったと言えるでしょう。 クックの思想は、後のイギリスにおける名誉革命やアメリカ独立宣言などにも影響を与え、近代立憲主義、法の支配の思想の発展に大きく貢献しました。

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