ギールケのドイツ団体法の関連著作
ギールケ以前のドイツ団体法学說とギールケの學說の位置
ギールケの「ドイツ団体法」は、19世紀後半から20世紀前半にかけてドイツで展開された、法人及び法人格に関する学説を体系的にまとめた著作として知られています。特に、ギールケが依拠した「法人擬制説」は、ローマ法以来の伝統的な考え方であった「法人現実説」に対する反論として、当時のドイツ法学界に大きな影響を与えました。
法人現実説
法人現実説は、法人は人間の集合体とは別に独立した実在であり、それ自体として権利能力や行為能力を有するという考え方です。この説は、中世ヨーロッパにおいて、教会や都市などの団体が、個人の集合体を超えた独自の権利や義務を持つようになった歴史的背景から生まれました。代表的な論者には、ゲオルグ・ベッカーやフランツ・フォン・リストルなどがいます。
法人擬制説
一方、法人擬制説は、法人はあくまでも法律上のフィクションであり、実際には人間のみが権利や義務の主体になり得ると考えます。この説は、19世紀のドイツ法学において、国家や法のあり方を厳密に捉え直そうとする動きの中で台頭しました。代表的な論者としては、フリードリヒ・カール・フォン・サヴィニーやベルンハルト・ヴィントシャイトなどが挙げられます。
ギールケの立場
ギールケは、法人擬制説の立場に立ちながらも、従来の擬制説を批判的に発展させました。彼は、法人は国家によって認められた「目的結合」であり、その目的を実現するために必要な範囲で権利能力を有するとしました。また、ギールケは、法人の意思決定については、「機関説」と呼ばれる独自の理論を展開し、法人の意思は、その構成員の意思とは独立して、法律によって定められた機関の行為によって決定されると主張しました。
ギールケ 以後のドイツ団体法学
ギールケの「ドイツ団体法」は、その後のドイツ法学、ひいては日本を含む大陸法系の国々の法学に多大な影響を与えました。特に、ギールケの法人擬制説と機関説は、現代の会社法や組合法などの団体法の基本的な考え方として、広く受け入れられています。しかし、現代社会においては、株式会社の巨大化やNPO法人などの新しい形態の団体の登場に伴い、ギールケの理論では十分に説明できない問題も生じており、現代の団体法理論は、ギールケの理論を批判的に継承しながら、新たな展開を見せています。