## キケロの友情についてに匹敵する本
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友情論
古代ローマの政治家・哲学者キケロが紀元前44年に著した『友情について』は、友情の重要性と本質を説いた古典的名著として広く知られています。ここでは、『友情について』に匹敵する歴史的名著として、イギリスの哲学者デイヴィッド・ヒュームが1741年に出版した『道徳論』を取り上げます。
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ヒュームの『道徳論』における友情
ヒュームは『道徳論』の中で、人間の道徳感情の源泉を探求し、理性よりも感情が道徳判断において重要な役割を果たすと主張しました。そして、友情は人間にとって自然な感情であり、道徳的に重要な価値を持つと論じています。
ヒュームは、利害関係を超えた「自然な友情」と、利害関係に基づく「人工的な友情」を区別しました。彼は、自然な友情は共感に基づいており、相手の喜びを自分の喜びとし、相手の悲しみを自分の悲しみとして感じることから生まれると説明しています。
一方、人工的な友情は、社会生活を円滑に進めるために必要なものであり、共通の利益や目的を達成するために人々が互いに協力し合うことから生まれます。ヒュームは、自然な友情の方が人工的な友情よりも道徳的に価値が高いと評価しました。
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両書の比較
『友情について』と『道徳論』は、どちらも友情を重要なテーマとして扱っていますが、そのアプローチは異なります。キケロは、主にストア哲学の伝統に立脚し、理想的な友情の姿を描写することに重点を置きました。
一方、ヒュームは、経験主義の立場から、人間の自然な感情としての友情を分析し、その道徳的な意義を明らかにしようとしました。両者は異なる時代背景、思想的立場から書かれましたが、友情の本質と重要性を探求している点で共通しています。