## ガルブレイスの新しい産業国家の発想
1967年に刊行された『新しい産業国家』で、経済学者ジョン・ケネス・ガルブレイスは、当時のアメリカ経済を支配していた大企業の構造と行動について分析を行いました。
この著書の中で彼は、従来の経済理論では説明できない新しい経済システムが出現したと主張しました。それが「新しい産業国家」です。
ガルブレイスは、現代の資本主義経済において、大企業が持つ力と影響力に着目しました。
従来の経済学では、企業は市場の需要に受動的に反応するとされてきました。しかし、ガルブレイスは、大企業は市場を操作し、消費者の需要を創造する力を持つと主張しました。
彼は、大企業内部に、「テクノ構造」と呼ばれる専門知識と経験を持つエリート集団が存在すると指摘しました。
テクノ構造は、企業の意思決定を支配し、企業の利益を最大化するために、生産、マーケティング、研究開発などの活動を統括します。
ガルブレイスは、テクノ構造が企業の目標を、株主への利益還元から、企業自身の成長と安定へと変化させたと主張しました。
企業は、市場シェアの拡大、売上高の増加、雇用の安定などを重視するようになり、その結果、経済全体に大きな影響を与えるようになりました。
ガルブレイスは、「新しい産業国家」において、政府が重要な役割を果たすと考えました。
大企業の力に対抗し、市場の失敗を修正するために、政府は積極的な役割を担うべきだと主張しました。 具体的には、所得格差の是正、公共財の提供、環境保護などの政策が必要であると訴えました。