## ガルブレイスの「新しい産業国家」の思想的背景
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経済力集中と企業の巨大化
ガルブレイスは、「新しい産業国家」を執筆した1960年代、アメリカ経済において巨大企業が支配的な地位を占めていたことを背景としています。 第二次世界大戦後の経済成長は、大企業による大量生産・大量消費を軸に進展し、企業規模はかつてないほど巨大化しました。
ガルブレイスは、従来の経済学が想定するような、多数の中小企業が競争する市場モデルは、もはや現実を反映していないと主張しました。
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テクノストラクチャーと計画経済
ガルブレイスは、巨大化した企業において、意思決定はもはや資本家ではなく、専門知識や技術を持つ「テクノストラクチャー」と呼ばれる専門家集団に移行していると分析しました。
そして、テクノストラクチャーは、企業の長期的な安定と成長を重視し、生産・販売・価格などに関する計画を策定・実行していくと主張しました。
この計画経済的な企業活動は、市場メカニズムによる調整を超えて、経済全体に大きな影響力を持つようになるとガルブレイスは考えました。
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消費者主権の衰退と「依存効果」
ガルブレイスは、従来の経済学では重視されてきた「消費者主権」にも疑問を呈しました。彼は、巨大企業は広告やマーケティングを通じて消費者の欲求を操作し、自社製品の需要を創出していると主張しました。
そして、企業によって作り出された需要を満たすために消費が促される状況を「依存効果」と呼び、消費者の真のニーズと企業によって操作された需要との間に乖離が生じている可能性を指摘しました。