カントの純粋理性批判のテクスト
序論
『純粋理性批判』は、人間の理性そのものを対象とし、理性に何が認識できるのか、認識できないのかを明らかにしようとした書物です。カントはこの書において、人間の認識能力には限界があると主張し、形而上学の伝統的な問題設定を批判的に検討しました。
認識能力の分析:感性と悟性
カントはまず、人間の認識能力を「感性」と「悟性」に分けます。感性は、外界からの感覚的印象を受け取る能力です。一方、悟性は、感性によって与えられた素材を概念を用いて思考する能力です。カントによれば、我々が認識する対象は、感性と悟性の協働によって成立します。
先験的感性論:時間と空間
カントは、感性が対象をどのように受け取るのかを考察し、「時間」と「空間」を先天的形式として提示します。時間と空間は、外界から独立して存在するものではなく、人間の感性が対象を秩序立てるための枠組みとして機能するとされます。
先験的論理学:悟性のカテゴリー
悟性は、感性によって与えられた素材を、「カテゴリー」と呼ばれる12の思考形式を用いて統合します。カテゴリーには、因果性、実体、可能性などがあり、これらのカテゴリーを通して、我々は経験を秩序立て、法則的なものとして認識することができます。
理性と「物自体」
カントは、人間の認識能力が感性と悟性に限定されると主張します。つまり、我々は「物自体」、すなわち現象の背後にある究極的な実在を認識することはできません。理性は、経験を超越した領域である「物自体」を認識しようとしますが、それは不可能であり、形而上学的な誤謬に陥るとされます。
理性とアンチノミー
理性は、経験を超越した領域である「物自体」について推論しようとしますが、その結果として、「世界には始まりがある」と「世界には始まりがない」のように、互いに矛盾する二つの命題が導き出される「アンチノミー」が生じます。カントは、アンチノミーを通して、理性が経験の領域を超えて使用されることの限界を示しました。