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カントの判断力批判の選択

## カントの判断力批判の選択

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判断力批判における選択の概念

カントの『判断力批判』において、**選択**(Wahl)は美的判断と目的論的判断の双方において重要な役割を果たします。選択は、単なる偶然的な思いつきや気まぐれな決定ではなく、一定の規則に基づいた活動であり、判断力に特有の働きとして位置づけられます。

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美的判断における選択:趣味の客観性と自由

美しさの判断、すなわち**趣味判断**において、私たちは特定の対象に快を感じ、それを美しいと判断します。しかし、この判断は単なる主観的なものではなく、他の主観も同様に判断するであろうという普遍妥当性の要求を潜在的に含みます。

カントは、この普遍妥当性の根拠を選択に求めました。美しい対象を前にしたとき、私たちの想像力と悟性との間には自由な調和が生まれ、快が生じます。この調和は、特定の概念に縛られることなく、自由に活動する想像力と、規則に基づいて対象を認識しようとする悟性との間の相互作用によって生まれます。

重要なのは、この調和は必然的なものではなく、あくまで**自由な選択**の結果として生じるということです。つまり、私たちは美しい対象に快を感じることを強制されるのではなく、自由な選択によって快を感じているのです。

この選択は、個々の経験や知識に依存した恣意的なものではありません。なぜなら、想像力と悟性の自由な調和は、すべての人間が共通して持つ心の能力に基づいているからです。

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目的論的判断における選択:自然の合目的性と体系的統一

自然の事物や現象は、まるで何らかの目的のために作られたかのように、驚くべき秩序と調和を呈しています。このような自然の**合目的性**は、私たちの認識能力をはるかに超えているため、経験的に説明することができません。

そこでカントは、合目的性を説明するために**目的論的判断**を導入します。私たちは、自然を、あたかもそれが意識的な創造者によって目的を持って作られたかのように理解しようとします。

しかし、カントは、自然の背後に実際に神のような知性存在を想定することを拒否します。私たちが自然に対していだく合目的性の概念は、あくまでも判断力による**選択**の結果なのです。

自然の多様性と複雑さにもかかわらず、私たちはそれを統一的な体系として理解しようと努めます。この際、私たちは、個々の事物や現象を、より高次の目的や原理に従属するものとして捉え直します。

この選択は、経験的な知識に基づいているのではなく、むしろ私たちの理性に内在する**体系的統一への要求**に基づいています。私たちは、世界を理解可能なものとするために、自然を合目的的な体系として理解することを選択するのです。

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