## カントの判断力批判の発想
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認識能力の第三の能力としての判断力
カントは、人間が世界を認識する能力として、感性、悟性、理性という三つの能力を挙げ、それぞれの働きと限界を明らかにしようとしました。「純粋理性批判」では、数学や自然科学の基礎となる認識能力である悟性を、「実践理性批判」では、道徳や自由の根拠となる認識能力である理性を取り扱いました。そして、最後の作品である「判断力批判」において、カントは感性と悟性、自然と自由の間を媒介する能力として**判断力**に注目します。
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美的判断と目的論的判断
判断力は、個別の特殊なものを、すでに持っている普遍的な概念(悟性)のもとに判断し、包摂していく能力です。しかし、世界には既知の概念に当てはまらないものや、目的がわからないものも存在します。
カントは、判断力を**美的判断力**と**目的論的判断力**の二つに分けました。美的判断力は、自然の事物に対して、その形や色彩などに「美しい」と感じる能力です。この時、私たちは快を感じますが、それは対象の概念や用途に基づくものではなく、 disinterested satisfaction (利害を超えた満足) と呼ばれます。
一方、目的論的判断力は、自然物の構造や機能を見て、まるで何らかの目的のために作られたかのように感じ、背後に目的因を想定する能力です。例えば、生物の複雑な器官や生態系における相互作用は、目的なくして存在しえないように思われます。
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判断力の原理としての合目的性
美的判断と目的論的判断は、どちらも**合目的性**という原理に基づいています。合目的性とは、あるものが、あたかも目的のために作られたかのように感じられる性質のことです。美的判断では、対象の形式が、我々の認識能力に合致していると感じられるときに、美を感じます。
目的論的判断では、自然物が、まるで何らかの意図や計画によって作られたかのように感じられます。しかし、カントは、自然そのものに目的が内在しているとは考えません。自然はあくまで機械論的な法則に従っているものであり、目的因を想定するのは、あくまで人間の認識能力の側の要請に過ぎません。