カントの判断力批判の企画書
企画概要
本書は、イマヌエル・カントの三部作を締めくくる著作であり、「純粋理性批判」(1781年)、「実践理性批判」(1788年)に続く、批判哲学の大系を完成させるものである。
執筆背景
「純粋理性批判」では、人間の認識能力(理性)を分析し、形而上学の原理を批判的に検討した。そして感性と悟性という二つの認識能力によって認識される現象界が我々の認識の対象であり、物自体は認識し得ないと結論づけた。続く「実践理性批判」では、道徳法則を純粋意志の働きから導き出し、自由、神、魂の不滅という形而上学的な理念を要請した。しかし、この二つの批判の間に横たわる自然界と道徳法則の橋渡し、すなわち自然の合目的性と人間の自由意志の関連性については十分に論じられていないという問題が残った。本書はこの問題に取り組み、自然と自由の間の断絶を埋める試みとして構想された。
構成(予定)
本書は、判断力という人間の能力に焦点を当て、二つの部分から構成される。
第一部「審美的判断力批判」では、美的判断のメカニズムを分析する。美とは何か、崇高とは何かを考察し、美的判断の主観性と普遍性の根拠を明らかにする。
第二部「目的論的判断力批判」では、自然の合目的性を考察し、自然を目的論的に理解する人間の認識能力について論じる。自然の有機体に見られる合目的性と、人間の認識能力における合目的性の関係を明らかにし、自然と自由を媒介する原理を探求する。
想定読者
* 「純粋理性批判」、「実践理性批判」を読破し、カント哲学への理解を深めたい読者
* 哲学、特に美学、認識論、倫理学に関心のある読者
* 自然科学と人文科学の融合に関心のある読者
本書の意義
本書は、カント哲学の体系を完成させるだけでなく、美学、認識論、倫理学、自然哲学といった哲学の諸分野に多大な影響を与えると考えられる。また、自然科学と人文科学の統合を目指す現代においても、その示唆に富む内容となっている。
出版計画
* 出版社: ヨハン・フリードリヒ・ハルトクング
* 出版予定日: 1790年
* 体裁: ハードカバー、約400ページ