## オースティン「ノーサンガー・アビー」とアートとの関係
###
絵画
「ノーサンガー・アビー」では、絵画は登場人物の教養や感性の指標として機能します。
* **主人公キャサリン・モーランドは絵画に無頓着**:
彼女は風景画を前に「美しい」としか言えず、その描写は作者の皮肉を感じさせます。これは当時の上流階級の女性に期待された教養の欠如を風刺していると同時に、キャサリンの純粋さ、偏見のない観察眼を示唆しています。
* **ヘンリー・ティルニーは絵画に造詣が深い**:
彼は、ラファエロの作品について熱く語り、その知識の深さを披露します。教養豊かな彼は、キャサリンの未熟さを認識しつつも、彼女の素直さに惹かれていきます。
###
ゴシック小説と風景画
「ノーサンガー・アビー」は、当時の流行であったゴシック小説のパロディとしての側面を持ちます。
* **キャサリンの空想**:
キャサリンはゴシック小説の影響を受け、ノーサンガー・アビーに暗い秘密や陰謀を期待します。これは、当時の風景画に見られる荒々しい自然や廃墟への憧憬が、現実よりも過剰にロマンチックな想像を掻き立てたことを示唆しています。
* **現実とのギャップ**:
実際には、アビーは古めかしいながらも普通の館であり、キャサリンの期待は裏切られます。オースティンは、ゴシック小説に見られるような劇的な展開や感情の起伏ではなく、日常的な人間関係や社会風刺を通して、当時の文学のあり方に疑問を呈しています。
このように、「ノーサンガー・アビー」は、絵画やゴシック小説に対する登場人物たちの反応を通して、当時の文化や社会通念、そして人間心理を鋭く描き出しています。