## オリーンの貿易理論「地域および国際貿易」の秘密
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従来の貿易理論への疑問
スウェーデンの経済学者、ベルトィル・オリーンは、1933年に発表した著書「地域および国際貿易」の中で、それまでの貿易理論、特にリカードの比較優位説に基づく貿易理論が抱える問題点を指摘しました。
リカードの理論は、労働生産性の国際的な違いが貿易を生み出すと主張しました。しかしオリーンは、労働生産性のみを考慮することは現実の経済活動からかけ離れていると批判しました。彼は、現実の世界では、資本、土地、技術など、様々な生産要素が存在し、その賦存量が国によって異なることを指摘しました。
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要素賦存説の提唱
オリーンは、自らの貿易理論である「要素賦存説」を提唱しました。この理論は、各国が相対的に多く保有する生産要素を相対的に安く供給できるという前提に基づいています。そして、各国はこの相対的に安価な生産要素をより多く使う財を専門的に生産し、国際的に交換することで利益を得ると説明します。
例えば、ある国が資本を豊富に保有している場合、資本集約的な財(自動車や機械など)の生産コストが相対的に低くなります。逆に、労働力が豊富な国では、労働集約的な財(繊維製品や農産物など)の生産コストが相対的に低くなります。このような状況下では、資本豊富な国は資本集約的な財を、労働力豊富な国は労働集約的な財を輸出することで、互いに利益を得ることができます。
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要素価格均等化定理
オリーンは、要素賦存説に基づき、「要素価格均等化定理」を導き出しました。この定理は、自由貿易が行われると、国によって異なる生産要素の価格(賃金や資本レンタル料など)が均等化していくというものです。
例えば、資本豊富な国では、貿易開始前は資本の価格が安く、労働力の価格が高い状態にあります。しかし、貿易が開始されると、資本集約的な財の輸出が増加し、資本の需要が高まります。その結果、資本の価格が上昇し、労働力の価格が低下していきます。一方、労働力豊富な国では、労働集約的な財の輸出が増加することで、労働力の価格が上昇し、資本の価格が低下していきます。このようにして、貿易を通じて生産要素の価格が国際的に均等化していくと説明されています。