## オットーの聖なるものから学ぶ時代性
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ルドルフ・オットーの思想
ルドルフ・オットーは、20世紀初頭のドイツの神学者、宗教哲学者であり、その主著『聖なるもの』において、宗教経験の本質を「ヌミノーゼ」という概念を用いて説明しました。彼は、聖なるものを、人間的な理性や道徳の範疇を超越した、全く異質なもの、畏怖と魅了を同時に呼び起こすものとして捉えました。
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近代における聖なるものの後退
オットーが生きた時代は、啓蒙主義以来の合理主義、科学主義が隆盛し、宗教的な価値観が相対化されていく時代でした。彼は、このような近代社会において、聖なるものが持つ圧倒的な力、神秘的な魅力が忘れ去られようとしていることに危機感を抱いていました。
合理主義の発展は、世界の神秘性を剥ぎ取り、すべてを人間の理性で理解可能な対象へと変えていきました。科学技術の進歩は、自然に対する畏怖の念を薄れさせ、人間中心主義的な世界観を助長しました。
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現代社会における聖なるものの再解釈
しかし、現代社会においても、聖なるものは完全に消滅したわけではありません。むしろ、近代化の進展に伴う様々な問題、例えば、環境破壊、精神的な空虚さ、アイデンティティの喪失などに対する反動として、聖なるものへの関心が再び高まっている側面も認められます。
現代社会における聖なるものは、伝統的な宗教の枠組みを超え、より多様な形で現れています。例えば、自然との触れ合い、芸術体験、社会貢献活動などを通して、人々は超越的なものに触れ、自己を超えた大きな力に生かされているという実感を得ることもあります。
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オットーの思想が示唆するもの
オットーの思想は、現代社会における聖なるものの意味を問い直す上で、重要な示唆を与えてくれます。合理主義や科学主義だけでは捉えきれない、人間の根源的な宗教性を再認識し、聖なるものへの畏敬の念を取り戻すことが、現代社会における様々な問題を克服する鍵となるかもしれません.