エールリヒの法社会学基礎論の発想
社会学的法学と法社会学
エールリヒは、従来の法学が法典や判例などの「法規範」を中心としていたのに対し、「社会における生きた法」を重視する「社会学的法学」を提唱しました。彼は、法典や判例といった国家によって制定・承認された法は、社会における法現象の一部に過ぎないと主張しました。
生きた法としての社会秩序
エールリヒは、社会を一つの有機体と捉え、社会を構成する様々な集団(家族、同業者組合、国家など)が独自の規範を持つことによって、社会全体の秩序が形成されると考えました。そして、このような社会集団内で実際に作用している規範こそが「生きた法」であると定義しました。生きた法は、人々の行動を実際に拘束し、社会関係を秩序付ける役割を果たしています。
法の多様性と変動
エールリヒは、社会には国家が制定した法以外にも、様々な集団が持つ多様な法が存在すると主張しました。そして、これらの法は社会の変動に伴って変化していくと説きました。これは、社会の変化に応じて、新しい社会集団が形成されたり、既存の集団の規範が変化したりするためです。
法社会学の課題
エールリヒは、社会学的法学に基づき、社会における生きた法を研究対象とする「法社会学」の構築を目指しました。法社会学の課題は、社会における法の形成、作用、効果などを実証的に解明することです。具体的には、様々な社会集団における規範の実態や、それらの規範が人々の行動に与える影響、規範と法規範との関係などを明らかにすることが求められます。