エンデのモモの思索
時間について
エンデの「モモ」は、時間という概念を深く掘り下げた作品です。作中では、時間は単なる物理的な尺度としてではなく、人間の経験、関係性、そして存在そのものと密接に結びついたものとして描かれています。
具体的には、人々の時間を奪う灰色の男たちの存在を通して、時間の経済的、効率的な側面が強調されています。彼らは、時間を節約し、無駄をなくすことを説きますが、それは同時に、人生の喜びや心の豊かさを犠牲にすることを意味します。
一方、主人公のモモは、人々に耳を傾け、共に時間を過ごすことで、彼らが失った時間、すなわち「本当の」時間を取り戻す手助けをします。これは、時間には量的な側面だけでなく、質的な側面、すなわち、人間的な交流や心の豊かさといった要素も不可欠であることを示唆しています。
人間存在について
「モモ」は、時間の問題と密接に関連しながら、人間存在の本質についても問いかけています。灰色の男たちに支配された世界は、効率や物質的な豊かさが優先され、人間疎外が進んだ現代社会を象徴していると言えます。
モモは、そうした世界の中で、人間本来の姿、すなわち、想像力、共感力、そして愛といった心の豊かさを体現しています。彼女は、言葉を持たないながらも、人々に耳を傾け、心を通わせることで、彼らの存在を肯定し、生きる喜びを思い出させていきます。
また、作中には、時間泥棒と対峙する存在として、時間の花を管理するマイスター・ホラの存在も描かれています。彼は、人間の創造性や心の豊かさが時間と密接に関係していることを象徴しており、「本当の」時間を生きることで、人間はより豊かな存在になれることを示唆しています。