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エンデ「はてしない物語」の形式と構造

エンデ「はてしない物語」の形式と構造

ミヒャエル・エンデの「はてしない物語」は、そのユニークな形式と構造によって、世界中の読者を魅了してきました。この作品は、物語の中の物語というメタフィクションの技法を用いており、読者を現実世界とファンタジーの世界、二つの異なる次元へと誘います。

二層構造の物語

「はてしない物語」は、主に二つの異なるレベルで進行します。一つは現実世界に生きる少年、バスチアンの物語で、もう一つは彼が読むファンタジーの書物「はてしない物語」内の物語です。この二つのストーリーラインは、物語が進むにつれて互いに影響を与え、絡み合っていきます。このような構造は、読者に物語の没入感を深めさせると同時に、物語の影響力を現実世界へと広げる力を持っています。

色彩を用いた物語の区別

物語内の物語を表現するために、エンデは非常に独創的な手法を用いています。書籍内のテキストは、バスチアンの現実世界を描く部分は赤色、ファンタジー世界を描く部分は緑色で印刷されています。この色の使用は、視覚的にも物語のレイヤーを明確にし、読者がどちらの世界にいるのかを瞬時に識別できるようにします。

自己参照とメタフィクション

「はてしない物語」のもう一つの特徴は、自己参照的な要素が豊富に盛り込まれている点です。物語の中で物語が読まれ、その読まれる物語がまた新たな物語を生むという形式は、メタフィクションの典型的な例です。この技法は、読者が物語の創造性とその枠組みについて考えるきっかけを提供します。

無限ループの象徴

タイトルにもなっている「はてしない」という言葉は、物語が理論上無限に続く可能性を象徴しています。実際、物語の終わりには「もう一度最初から読み始める」という指示があり、物語が永遠に続くループを示唆しています。この無限ループは、物語の永続性と、読者自身が物語の一部となることを示唆しており、非常に深い読後感を残します。

「はてしない物語」は、その形式と構造において、ただの子供向けファンタジーという枠を超え、文学的な深さと読者との対話を試みる作品です。その革新的なアプローチは、今日でも多くの読者に影響を与え続けています。

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