エディントンの星と原子の発想
エディントンの関心の対象
アーサー・エディントンは、イギリスの天体物理学者で、星の構造と進化の理論に多大な貢献をしました。彼は特に、星の中で働く物理的なプロセス、特にエネルギー生成のメカニズムに興味を持っていました。
当時の標準的な星モデル
エディントンが活躍した20世紀初頭、星のエネルギー源についてはまだよくわかっていませんでした。当時最も有力だったのは、星が重力収縮によってエネルギーを生み出しているという説でした。しかし、エディントンはこの説では星の寿命を説明できないことに気づきました。重力収縮だけでは、星が何十億年も輝き続けるのに十分なエネルギーを供給できないからです。
原子核融合の示唆
エディントンは、星の中で起こっている核反応がエネルギー源ではないかと考えました。彼は、星の内部の高温・高圧環境下では、水素原子核が融合してヘリウム原子核になり、その過程で莫大なエネルギーが放出される可能性があると指摘しました。これは、後に核融合として知られるプロセスです。
エディントンの直感と洞察
エディントンは、当時まだ原子核融合の詳細は解明されていませんでしたが、自身の理論的考察と観測データから、星の中でこのプロセスが起こっている可能性が高いと確信していました。彼は、星の質量と光度の関係に関する観測データから、星の内部は非常に高温でなければならないことを示しました。また、アインシュタインの特殊相対性理論を用いて、質量とエネルギーが等価であることを示し、星のエネルギー源となりうる莫大なエネルギーが原子核に秘められている可能性を指摘しました。
その後の研究への影響
エディントンの先駆的な研究は、後の世代の科学者が星のエネルギー源を解明するための道を切り開きました。1930年代には、ハンス・ベーテらによって太陽エネルギーが核融合反応によって生み出されていることが証明され、エディントンの洞察力の正しさが証明されました。