ウルフのダロウェイ夫人の表現
意識の流れ
ウルフは、登場人物たちの心の中を自由に行き来する「意識の流れ」と呼ばれる手法を駆使し、彼らの思考や感情を、断片的な記憶や感覚と共に描き出しています。 句読点の使用を避けたり、時制を自由に行き来したりすることで、登場人物たちの意識が流れる様を表現しています。
例えば、クラリッサが花屋を訪れる場面では、彼女の過去の記憶や現在の感覚、未来への思いが、まるで音楽のように流麗に展開されます。 読者は彼女の心の動きを直接追体験することで、クラリッサの複雑な内面世界に深く入り込んでいくことができます。
自由間接話法
ウルフは「自由間接話法」を多用することで、客観的な描写と登場人物の主観的な視点を巧みに融合させています。 地の文の中に登場人物の思考や感情を織り交ぜることで、読者は登場人物の心の声に自然と耳を傾けるように導かれます。
例えば、ピーターがクラリッサと再会する場面では、彼の動揺や喜び、そして過去の苦い思い出が、地の文を通して語られます。 読者はピーターの心情を客観的に観察しながらも、彼自身の視点を通してクラリッサとの再会を経験することができます。
象徴主義
ウルフの作品には、登場人物や物事に象徴的な意味合いが込められています。 例えば、クラリッサは人生の喜びや美しさを追求する一方で、常に死の影に怯えている存在として描かれています。 一方、セプティマスは戦争のトラウマに苦しむことで、社会に適応できない人間の象徴として描かれています。
比喩表現
ウルフは、比喩表現を駆使することで、登場人物の心情や情景を鮮やかに描き出しています。 特に、視覚や聴覚に訴えかける比喩表現が多く用いられており、読者は作品世界をよりリアルに感じ取ることができます。
例えば、ロンドンの街並みを描写する場面では、光と影のコントラストや、様々な音が混ざり合う様子が、詩的な表現で描写されています。 これらの比喩表現を通して、読者は登場人物たちが生きているロンドンの街を五感で感じ取ることができるのです。