ウルフのダロウェイ夫人の構成

ヴァージニア・ウルフの小説『ダロウェイ夫人』は、1925年6月のある晴れた夏の日のロンドンを舞台に、クラリッサ・ダロウェイ夫人とその周辺の人々の1日を、意識の流れの手法を用いて描いた作品です。

小説の時間的背景は、第一次世界大戦後の1923年6月のある一日です。物語はこの一日をほぼリアルタイムで追っていきます。

ウルフは、数分間の出来事を何ページにもわたって描写したり、逆に数時間を数行で片付けたりと、時間の流れを自在に操ります。例えば、クラリッサが過去の恋人ピーターと再会する場面は、実際の時間としては短いものの、彼女の心理描写を通じて長々と描かれます。

ウルフは、全知的な語り手の立場を取らず、登場人物たちの意識の中に入り込み、彼らの思考や感情を直接的に描き出します。読者は、クラリッサのパーティーの準備、セプティマス・スミス氏の戦争後遺症、ピーター・ウォルシュのクラリッサへの複雑な感情など、登場人物たちの内面世界を深く理解することができます。

物語は、クラリッサ、セプティマス、ピーター、リチャードなど、様々な登場人物の視点から語られます。読者は、場面転換とともに登場人物たちの意識の中を自由に行き来し、彼らの視点を通して物語を体験します。

小説全体を通して、時計の音、鳥のさえずり、花などのモチーフが繰り返し登場します。これらのモチーフは、時間の経過、生の輝き、死の影などを象徴し、物語に深みを与えています。

社交界の花形であるクラリッサと、戦争後遺症に苦しむセプティマスは、一見対照的な存在です。しかし、二人とも生の意味や死の影に悩み、自分自身のアイデンティティを探し求めているという点で共通しています.

物語は、現在と過去の場面が交錯しながら展開します。登場人物たちは、過去の記憶や後悔、喪失感に苛まれながらも、現在を生きようともがきます。