## ウルフのオーランドーと時間
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時間の複数の様相
ヴァージニア・ウルフの小説『オーランドー』において、時間は単なる経過や尺度以上の複雑な様相を呈しています。作品は、16世紀から20世紀初頭という約400年の時間を舞台とし、主人公オーランドーの生涯を通じて、時間の長さと短さ、その流れ方の変化、そして時間と存在の関係が鮮やかに描かれます。
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時間の伸縮
物語は、オーランドーが永遠の若さと美しさをエリザベス1世から賜るところから始まります。そして、数世紀にわたる人生の中で、彼は様々な経験をし、多くの変化を遂げますが、その肉体の年齢はほとんど進みません。これは、一般的な人間の時間感覚とは大きく異なり、時間の流れが一定ではないことを示唆しています。
一方で、オーランドーは、ある時期には数日間にわたる精神的な苦悩を経験し、その間の時間の流れが非常に長く感じられます。これは、時間の長さが客観的な尺度ではなく、個人の主観的な経験によって大きく左右されることを示しています。
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時間と歴史
『オーランドー』は、イギリスの歴史と社会の変化を背景に描かれています。エリザベス朝、ロマン主義時代、ヴィクトリア朝、そして20世紀初頭と、それぞれの時代背景や社会通念が、オーランドーの人生観や行動に影響を与えている様子が描写されています。
特に、オーランドーが女性に変身するエピソードは、社会における性役割やジェンダー観の変遷と深く関わっています。時間と共に変化する社会規範や価値観が、個人のアイデンティティや人生に大きな影響を与えることが示唆されています。
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時間と文学
『オーランドー』の中で、時間と密接に関係している要素の一つに文学があります。オーランドー自身も詩作に励んでおり、作中では各時代の文学様式が反映されています。ルネサンス期、ロマン主義、近代文学など、時代の変遷と共に変化する文学の形式や表現方法が、時間の流れを象徴的に表しています。
また、ウルフは、意識の流れや内的 monologue といった20世紀初頭の文学技法を用いることで、オーランドーの主観的な時間感覚や意識の変化を描き出しています。これは、時間と文学表現の密接な関係を示すと共に、ウルフ自身の文学観を示すものでもあります。