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ウエルズの世界史概観の光と影

ウエルズの世界史概観の光と影

光:壮大なスケールと平易な語り口

H.G.ウェルズが1920年に発表した「世界史概観」は、人類史を先史時代から第一次世界大戦後までを網羅した壮大なスケールの歴史書です。類書が少ない時代にあって、地球全体の文明や文化を大きな流れの中で捉え、歴史のダイナミズムを鮮やかに描き出した点が高く評価されています。

ウェルズは歴史の専門家ではありませんでしたが、持ち前の優れた文章力と洞察力で、複雑な歴史的事象を分かりやすく解説しました。専門用語をなるべく避け、平易な言葉で書かれた本書は、歴史に関心のなかった人々をも魅了し、歴史を学ぶ楽しさを広く伝える役割を果たしました。

影:ヨーロッパ中心主義と歴史解釈の偏り

「世界史概観」は、出版当時からそのヨーロッパ中心主義的な視点が批判の対象となってきました。ウェルズは人類史をヨーロッパ文明の進歩の物語として描き、アジアやアフリカなどの非ヨーロッパ圏の文化や歴史を軽視する傾向がありました。

また、ウェルズの社会主義的な思想が歴史解釈に色濃く反映されている点も指摘されています。彼は歴史を階級闘争の歴史として捉え、資本主義や帝国主義を批判的に評価する一方で、社会主義の理想を高く評価しました。

これらの偏りは、現代の多様な価値観や歴史観から見ると、大きな問題点として捉えられます。しかし、当時の時代背景を考慮すると、ウェルズの視点は決して特殊なものではありませんでした。むしろ、彼の著作は当時の一般的な歴史観を反映したものであったと言えるでしょう。

重要なのは、「世界史概観」を単なる歴史的事実の羅列としてではなく、ウェルズ独自の視点や解釈が反映された歴史書として批判的に読むことです。彼の洞察力や文章力は、現代の読者にとっても多くの示唆を与えてくれます。

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