ウェーバーの職業としての政治を読む前に
1. ウェーバーの人物像をおさえる
マックス・ウェーバー(1864-1920)は、ドイツの社会学者、経済学者、政治学者であり、近代社会科学の創始者の一人とされています。彼は、宗教社会学、組織論、経済史、政治思想など、多岐にわたる分野で重要な業績を残しました。特に、「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」における宗教と経済の関係についての考察や、「官僚制」の分析は、現代社会を理解する上で欠かせないものとなっています。
ウェーバーは、近代社会を「合理化」の過程として捉え、その光と影を鋭く指摘しました。彼は、合理化が人間を「鉄の檻」に閉じ込め、意味や価値を見失わせる可能性を危惧していました。
2. 「職業としての政治」が書かれた時代背景を知る
「職業としての政治」は、1919年1月、第一次世界大戦敗戦直後の混乱したドイツで、ミュンヘン大学の学生たちに向けて行われた講演がもとになっています。当時のドイツは、敗戦による経済的な困窮、政治的な不安定、社会的な混乱に直面しており、ウェーバー自身も政治への関与を深めていました。
このような時代背景を踏まえることで、ウェーバーが当時のドイツ社会に向けてどのようなメッセージを発信しようとしていたのか、より深く理解することができます。
3. 「政治」に対する一般的なイメージを一度捨てる
「政治」という言葉は、しばしば汚職、権力闘争、欺瞞といったネガティブなイメージと結びつけられます。しかし、ウェーバーは「政治」を、あくまでも「国家の暴力装置を独占的に行使する権利」を獲得するための「指導者」と、それに従う「追従者」との間の力関係として捉え直します。
ウェーバーの議論を理解するためには、既存の「政治」に対するイメージを一度捨て去り、彼の定義に沿って読み進めていくことが重要です。
4. 「倫理」に関する基礎知識に触れておく
ウェーバーは、「職業としての政治」において、政治における「倫理」の問題を深く掘り下げています。彼は、「目的合理的行為」と「価値合理的行為」、「責任倫理」と「信念倫理」といった対比を用いながら、政治家が直面する倫理的なジレンマを鮮やかに描き出します。
これらの概念を理解するために、事前に倫理学、特にカント倫理や功利主義といった代表的な倫理思想について触れておくことが望ましいです。