ウェーバーの権力と支配の関連著作
マックス・ウェーバーの思想を継承・批判・発展させた古典的名著
マックス・ウェーバーは、近代社会における権力と支配の構造を鋭く分析した社会学者です。彼の主著『社会学的および経済学的認識の「客観性」』『プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神』『経済と社会』などは、社会科学の古典として、今日なお多くの研究者に影響を与え続けています。
権力論
* **タルコット・パーソンズ『社会体系論』(1951)**：パーソンズは、ウェーバーの権力論を体系的に発展させ、社会システムの維持・統合における権力の役割を論じました。彼は、権力を「集団目標達成のための手段を動員し、人々を行動に駆り立てる能力」と定義し、それが社会秩序の維持に不可欠であると主張しました。
* **ロバート・ダール『統治における多元主義』(1961)**：ダールは、アメリカのニューヘイブン市における政治過程の分析を通じて、権力が多元的に分散しているという「多元主義論」を展開しました。彼は、ウェーバーが想定したような単一の支配エリートが存在するのではなく、様々な利益集団が競争し、妥協することで政治過程が形成されると主張しました。
* **スティーブン・ルークス『権力：ラディカルな見方』(1974)**：ルークスは、権力の概念を「三つの顔」として捉え直すことで、従来の権力論を批判的に発展させました。彼は、意思決定過程における権力行使（一次元的権力）だけでなく、議題設定や選好形成における権力行使（二次元的権力）、さらには人々の意識や欲望を操作する権力行使（三次元的権力）にも注目しました。
支配の諸類型
* **レイモン・アロン『支配人と被支配者』(1976)**：アロンは、ウェーバーの支配類型論を発展させ、歴史的な事例研究を通じて支配の形態と変容を分析しました。彼は、伝統的支配、カリスマ的支配、合法的支配に加えて、全体主義やテクノクラシーなど、現代社会における新たな支配形態にも注目しました。
* **ミシェル・フーコー『監獄の誕生：監視と処罰』(1975)**：フーコーは、近代社会における権力と知識の関係に着目し、刑罰システムの変容を分析しました。彼は、ウェーバーが重視した国家権力だけでなく、病院、学校、工場など、社会の様々な領域に浸透する「規律権力」の働きを明らかにしました。
官僚制論
* **ロバート・キング・マートン『社会構造とアノミー』(1938)**：マートンは、ウェーバーの官僚制論を発展させ、官僚制が内包する機能不全と、それが個人の逸脱行動を生み出すメカニズムを分析しました。彼は、官僚制が形式主義や規則万能主義に陥りやすく、個人の創造性や柔軟性を阻害する可能性を指摘しました。
* **アルビン・グールドナー『組織と専門職』(1954)**：グールドナーは、石膏工場における労働紛争の事例研究を通じて、ウェーバーの官僚制モデルの限界を指摘しました。彼は、官僚制が必ずしも効率的ではなく、組織の内部矛盾や権力闘争によってその機能が阻害される可能性を明らかにしました。
これらの著作は、ウェーバーの権力と支配に関する理論を発展させ、批判的に検討することで、現代社会における権力構造と支配のメカニズムをより深く理解する上で重要な貢献を果たしています。