## ウェーバーの権力と支配と時間
支配の類型における時間の要素
マックス・ウェーバーは、権力を行使する際の正当性の根拠に基づき、支配の類型を3つに分類しました。
これらの類型は、時間の経過と社会の変化に対する安定性や持続可能性という観点から考察することができます。
* **伝統的支配**:
過去の慣習や伝統、しきたりなどを正当性の根拠とする支配形態です。
家父長制や家産官僚制などが例として挙げられます。
伝統は長い時間をかけて形成されるものであり、このタイプの支配は比較的安定しており、長期にわたって持続する可能性があります。
しかし、社会の変化や近代化に伴い、伝統に対する意識が薄れていくと、その正当性が揺らぎ、支配体制が不安定になる可能性も孕んでいます。
* **カリスマ的支配**:
特定の指導者個人に備わった、超自然的、超日常的な資質や能力(カリスマ)を正当性の根拠とする支配形態です。
英雄や預言者、革命指導者などが例として挙げられます。
カリスマは、あくまでも指導者個人の特質に依存するため、支配の持続は不安定なものとなります。
指導者の死去やカリスマの失墜によって、支配体制が崩壊する可能性が高い点が特徴です。
カリスマ的支配が長期にわたって持続するためには、カリスマの日常化や制度化が必要となります。
* **合法的支配**:
法律や規則など、合理的に制定されたルールに基づいて正当化された支配形態です。
近代官僚制などが代表的な例です。
このタイプの支配は、感情や伝統に左右されない合理的なルールに基づいているため、他の2つの類型と比較して、最も安定しており、長期にわたって持続する可能性が高いと言えます。
しかし、法律や規則は社会の変化に対応して絶えず更新していく必要があり、その柔軟性の欠如が、社会の停滞や支配体制の硬直化を招く可能性も孕んでいます。
支配の持続と変容
ウェーバーは、上記の支配の類型は、あくまで理念型であり、現実の社会ではこれらの類型が純粋な形で存在することは稀であり、複数の類型が混在していると指摘しています。
例えば、カリスマ的支配は、指導者の死後、そのカリスマを継承する仕組みを作ることで、伝統的支配に移行していくことがあります。
また、伝統的な権威を持つ支配者が、近代的な官僚制を取り入れることで、支配の安定化を図ることもあります。
このように、支配の形態は時間とともに変化していく可能性があり、その変化の過程には、権力闘争や社会変動、支配者による戦略などが複雑に絡み合っています。