## イプセンのペール・ギュントの原点
イプセン自身の経験とノルウェーの国民性
「ペール・ギュント」は、イプセン自身の経験や思想、そして彼が目の当たりにしたノルウェー社会の状況が色濃く反映された作品です。
イプセンは、1850年にノルウェー政府から奨学金を得て、ヨーロッパ各地を旅しました。彼はそこで、近代化が進むヨーロッパ社会と、伝統的な農村社会が残るノルウェーとの間にあるギャップを痛感したと言われています。
「ペール・ギュント」の主人公であるペールは、夢想家で現実逃避に走り、成功や自己実現を求めて世界中を放浪します。しかし、最終的には故郷ノルウェーへと戻り、自身のルーツと向き合うことになります。
ペールの姿は、当時のノルウェー社会が抱えていた、近代化への対応、国民としてのアイデンティティの確立といった問題と深く関わっています。イプセンはペールを通して、ノルウェーの人々に対して、自国の伝統や文化を見つめ直し、真の自己を確立することの重要性を訴えかけたと考えられます。
ノルウェーの民話や伝説の影響
「ペール・ギュント」には、ノルウェーの民話や伝説に登場する、トロールや妖精といった神秘的な存在が登場します。
特に、ペールが山中で出会う、トロールの王の娘である「緑衣の女」は、ペールを誘惑し、現実逃避へと誘う存在として描かれています。
また、作品全体を通して、ノルウェーの雄大な自然が重要な舞台装置として描かれています。フィヨルドや山岳地帯といった自然の描写は、単なる背景としてではなく、登場人物たちの心情や運命を暗示する象徴的な意味合いを持っていると解釈されています。
これらの要素から、「ペール・ギュント」は、ノルウェーの豊かな自然と文化、そして人々の精神世界が反映された作品であると言えるでしょう。