イプセンのジョン・ガブリエル・ボーコマンから得られるもの
イプセンの描く人間像
イプセンの作品は、常に人間の本質に鋭く迫ることで知られていますが、「ジョン・ガブリエル・ボーコマン」も例外ではありません。 特に印象的なのは、主人公ボーコマンを含め、登場人物たちの多くが過去に囚われ、そこから逃れられない姿です。
ボーコマンは、かつて銀行の頭という社会的地位と、愛する女性との未来を共に手にする機会を得ていました。しかし、自身の野望を優先した結果、全てを失ってしまいます。 彼が山荘に引きこもってから8年の月日が流れ、社会復帰を夢見てはいるものの、過去の亡霊から自由になることはできません。
社会と個人の対立
もう一つ、「ジョン・ガブリエル・ボーコマン」から読み取れる重要な要素は、社会と個人の対立です。 ボーコマンは、自身の野望を実現することで社会に貢献できると信じて疑いませんでした。しかし、彼の行動は社会のルールから逸脱しており、結果的に彼は「犯罪者」として断罪されてしまいます。
この対立は、ボーコマンの妻グンヒルドと、その妹でボーコマンのかつての恋人であるエラとの間にも見られます。グンヒルドは、社会的地位や名誉を重視する一方で、エラは愛や個人の自由を大切にします。
象徴的な舞台設定
イプセンの作品において、舞台設定は単なる背景以上の意味を持ちますが、「ジョン・ガブリエル・ボーコマン」も同様です。 特に、ボーコマンが8年間も閉じこもっている山荘は、彼の内面を象徴していると言えます。 山荘は外界から隔絶された閉鎖的な空間であり、それは過去に囚われ、未来への希望を失ってしまったボーコマンの心の状態を表しています。
また、劇中に登場する「ボーコマンの王国」という概念も、彼の内面を象徴する重要な要素です。これは、ボーコマンが自身の野望を実現した先に見た夢の世界ですが、それは同時に彼の自己中心的な欲望と、現実逃避の願望を表してもいます。
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