## アウグスティヌスの神の国に匹敵する本
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トマス・アクィナスの「神学大全」
「神の国」がキリスト教思想の枠組みを提示したのに対し、「神学大全」はスコラ哲学の金字塔として、理性による神の認識を探求しました。アリストテレス哲学の影響を強く受けたアクィナスは、人間の理性と神の啓示の調和を論じ、神学体系を構築しました。
「神学大全」は、神の存在証明、神の属性、三位一体論、創造論、人間論、倫理、救済論など、神学の広範なテーマを網羅しています。特徴的なのは、様々な学説を公平に紹介し、論理的な推論によって自説を展開していく点です。特に、自然神学における五つの道は、中世思想に大きな影響を与えました。
「神の国」が歴史哲学的な視点からキリスト教を擁護したのに対し、「神学大全」は理性と信仰の調和を重視した点が対照的です。しかし、どちらも西洋思想史に多大な影響を与えた記念碑的作品として、現代においても読み継がれています。